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昔の文学には、興味深いのがたくさんありますね。学校でいろいろ習ったときは、特にあまり感じなかったのですが、 ある程度大人になってから、それらのものに接すると風情が感じられます。最近のものもご紹介しています。 では、よろしく御願い致します。
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2007/11/08 日記<南総里見八犬伝>
南総里見八犬伝
南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん、南總里見八犬傳)は、江戸時代後期に曲亭馬琴(滝沢馬琴)によって著された読本。略称は八犬伝。1814年(文化 (元号)|文化11年)に刊行が開始され、28年をかけて1842年(天保13年)に完結した大作である。全98巻、106冊。上田秋成の『雨月物語』などと並び、江戸時代の戯作文芸の代表作であり、日本の伝奇長編小説の古典の一つである。概要
室町時代後期を舞台に、里見氏|南総里見家の姫・伏姫と神犬八房の因縁によって結ばれた八人の若者(八犬士)を主人公とする長編伝奇小説である。八犬士はそれぞれに仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字のある数珠の玉(仁義八行の玉)を持ち、牡丹の形の痣を身体のどこかに持っている。また、彼らは共通して「犬」の字を含む姓を持つ。関八州の各地で生まれた彼らは、それぞれに辛酸を嘗めながら、前世の因縁に導かれて互いを知り、安房に理想的な国を築く里見家の下に結集する。忠臣・孝子・貞婦のおこないは報いられ、佞臣・姦夫・毒婦のおこないは罰せられる、儒教的道徳にもとづいた勧善懲悪の物語である。成立と影響
『八犬伝』の構成には『水滸伝』の影響が強い。たとえば『水滸伝』では百八の魂が飛び散りそれぞれ豪傑英雄として各地に現われるが、『八犬伝』では伏姫の八の玉が飛び散り八犬士として世に現われる、という物語発端が共通している。馬琴は『新編水滸画伝』の刊行に関わったほか『傾城水滸伝』などの翻案作品を執筆し、また金聖嘆による七十回本を批判して百二十回本を正統とする批評を行うなど、『水滸伝』の精読者であった。『八犬伝』は、日本を舞台にした勧善懲悪の物語として『水滸伝』を換骨奪胎した作品である。作中には博覧強記をうたわれた馬琴の漢学教養や中国白話小説への造詣が、ときに衒学的と評されるほど引用されたり、物語構成に組み込まれたりしている。馬琴はこの物語の完成に、48歳から75歳に至るまでの後半生を費やした。その途中失明という困難に遭遇しながらも、息子宗伯の妻であるお路の助力を得ての口述筆記により最終話までこぎ着けた。こうした『八犬伝』執筆時の馬琴のエピソードも、芥川龍之介『戯作三昧』などの創作の題材となっている。『八犬伝』の当時の年間平均発行部数は500部ほどであったが、貸本により実際にはより多くの人々に読まれていた。馬琴自身「吾を知る者はそれただ八犬伝か、吾を知らざる者もそれただ八犬伝か」と述べる人気作品であり、刊行中からすでに歌舞伎の演目になり、抄録や翻案作品、亜流作品を生み出した。明治に入ると、坪内逍遥が『小説神髄』で旧時代の戯作文学の代表として『八犬伝』を批判し、八犬士は「''仁義八行の化物にて決して人間とはいひ難かり''」と断じているが、このことは、当時『八犬伝』が持っていた影響力の大きさを示している。本作は現在に至るまで大衆文学・ドラマ・漫画・アニメなど各ジャンルの創作に影響を与え、多くの翻案が生み出された。「前世の因縁に結ばれた義兄弟」「共通する聖痕・霊玉・名前の文字」「抜けば水気を放つ名刀・村雨」などのモチーフを借りた作品は枚挙にいとまない(#南総里見八犬伝を題材にした作品|関連作品)。内容
長大な物語の内容は、南総里見家の勃興と伏姫・八房の因縁を説く発端部(伏姫物語)、関八州各地に生まれた八犬士たちの流転と集結の物語(犬士列伝)、里見家に仕えた八犬士が関東管領・滸我(古河)公方連合軍との戦争(関東大戦、対管領戦)を戦い大団円へ向かう部分に大きく分けられる。抄訳本では親兵衛の京都物語や管領戦以降が省略されることが多い。 発端
結城合戦に敗れた里見義実は安房に落ち延びる。兵を挙げ山下定包を討った義実は、定包の妻玉梓に一度出した助命の言葉を翻し、玉梓は呪詛の言葉を残して処刑された。時はくだり、里見領の飢饉に乗じて隣領の安西景連が攻めてきた。落城を目前にした義実は飼犬八房に「景連の首を取ってきたら娘の伏姫を妻に与える」と戯れを言うが、八房は景連の首を持参。伏姫は八房に従い富山に入った。八房の気を受けて懐妊した伏姫はこれを恥じて腹を切り、胎内に犬の子がないことを証した。その傷口から流れ出た白気は姫の数珠を空中に運び、仁義八行の文字が記された八つの大玉を飛散させる。この悲劇に関わった里見家臣金碗大輔は僧体となって丶大(ちゅだい)を名乗り、八方に散った玉を求める旅に出るのだった。 犬士列伝
武蔵大塚村の犬塚信乃は、父の自害により伯母夫婦の大塚家に引き取られ、その養女浜路の将来の婿とされたが、伯母夫婦は信乃が父から託された鎌倉公方家の宝刀#村雨|村雨丸を奪い信乃を除くことを企んでいた。この大塚家の下男額蔵(犬川荘助)は信乃と同じ玉と痣を持っており、二人は密かに義兄弟の契りを結ぶ。信乃18歳の夏、伯母夫婦は村雨丸をすりかえ、信乃を滸我(古河)の公方成氏の許に旅立たせた。信乃を慕う浜路は非業の死を遂げるが、今際の際に煉馬家旧臣犬山道節と異母兄妹の対面を果たす。「七ツ伊呂波東都不二尽・犬田小文吾」滸我で信乃は間者と疑われ、芳流閣の屋根の上で犬飼現八と戦うが、ともに利根川に転落。下総行徳に流れつき、犬田小文吾の父である旅籠古那屋主人に助けられた。小文吾の義弟山林房八をめぐる悲劇のあと、一同は宿に居合わせた丶大から里見家との因縁を知らされる。房八の子犬江親兵衛は丶大らに連れられ安房に向かうが、途中神隠しに遭う。一方、大塚に向かった三犬士は、主人殺しの廉で処刑されかけた荘助を救う。危地を脱し上野国に向かった四犬士は、道節による管領扇谷定正への仇討ちに遭遇する。こうして上州荒芽山に五犬士が集結するが、管領家の軍勢が迫り犬士たちは離散する。武蔵に逃れた小文吾は妖婦船虫と出会い、石浜城主千葉氏|千葉家家老・馬加大記によって抑留される。小文吾が城内で出会った女田楽師旦開野(犬坂毛野)は、対牛楼で一族の仇・大記を討ち果たす。諸国を経て下野国を訪れた現八は庚申山の麓で犬村大角とめぐり合い、彼の父に化けた妖猫と対峙する。大角の妻雛衣の犠牲と玉の力により妖猫は退治され、大角も犬士の群れに加わる。甲斐国を訪れた信乃は猿石村村長の養女浜路を知る。信乃は危機に陥るが、石和町|石和の寺に犬士捜索の拠点を置いた丶大と道節により救われる。この浜路は実は里見家の姫で、幼少時に大鷲に攫われた浜路姫であった。越後小千谷にたどり着いた小文吾は、船虫に襲われたのを契機に荘助と再会。領主による処刑の危機を脱した二人は毛野と邂逅して里見家との縁を伝えるが、毛野は残る仇・籠山逸東太への復讐を誓っていた。武蔵穂北で現八と大角、信乃と道節は邂逅し、この地を拠点とした。そのころ毛野は湯島天神で扇谷定正夫人蟹目前らの知遇を得て奸臣籠山逸東太の殺害を依頼される。これを立ち聞きした道節は犬士や穂北郷士とともに挙兵して定正の命を狙うが、蟹目前らの自害を知って兵を退く。七犬士は、下総結城で丶大がおこなう結城合戦戦死者の法要に向かう。そのころ、上総館山城主蟇田素藤は八百比丘尼妙椿の助力を得て里見家に反旗を翻した。富山に登った老侯里見義実の前に、伏姫神に育てられた犬江親兵衛があらわれる。親兵衛は素藤の乱を討ち、妙椿は本体(玉梓の怨念の宿った狸)を示して退治される。親兵衛は結城に向かい、ここに八犬士は集結する。犬士たちはともに安房に赴き里見家に仕えた。 関東大戦と大団円
里見義成は朝廷への使者として犬江親兵衛を京都に遣わすが、親兵衛は管領細河政元に気に入られて抑留される。親兵衛は京を騒がす虎を討ち、帰国の途に就く。そのころ犬士たちと彼らが仕える里見家を恨む扇谷定正は、山内顕定・足利成氏らと結び、里見討伐軍を発していた。行徳口・国府台・洲崎沖の三ヶ所で合戦が行われ、いずれも里見家の大勝利に終わった。朝廷から停戦の勅使が訪れて和議が結ばれ、里見家は占領した諸城を返還した。信乃は、捕虜となっていた成氏に村雨丸を献上し父子三代の宿願を遂げる。八犬士は里見義成の八人の姫と結ばれ重臣となる。時は流れ、犬士たちの痣や玉の文字は消え、奇瑞も失われた。丶大は安房の四周に配する仏像の眼として数珠玉を返上させる。里見家三代当主の義通が没すると、高齢になった犬士たちは子供に家督を譲り富山に籠った。彼らは仙人となったことが示唆される。里見家もやがて道を失って戦乱に明け暮れ、十代で滅ぶことになる。 回外剰筆
原典には、馬琴による小説仕立ての「あとがき」が置かれている。馬琴が用いた参考史料の開示、里見氏の史実(当時の軍記物にもとづく)や安房の地理の解説のほか、著者の失明の事実が明かされ、筆記者お路への慰労の言葉が書かれている。主要登場人物
『八犬伝』の登場人物は、霊獣・妖怪も含めて約400人に及ぶ。表記は『八犬伝』原典を優先とし、史実の人物で異なる表記がある場合は括弧で付記する。史実人物の実際の事跡はリンク先を参照のこと。 八犬士
:孝の珠を持つ。父は犬塚(大塚)番作、母は手束(たつか)。15歳まで性別を入れ替えて育てると丈夫に育つという言い伝えから女名をつけられ、女装で育てられる。犬士列伝は父番作の物語から説き起こされており、読者の前に最初に姿を現す犬士・信乃は前半の主役と言える。許嫁は浜路。使用する太刀は足利氏の宝刀・村雨#村雨 (架空の刀剣)|村雨丸。脇差は桐一文字。左腕に牡丹の痣。*犬川 荘助 義任(いぬかわ そうすけ よしとう)
:義の珠を持つ。伊豆国|伊豆の出身、父親は北条の荘官であったが、主君足利政知の勘気に触れて切腹。里見家に仕官している母の従兄、蜑崎輝武(照文の父)を頼って母とともに安房国に向かうが、その途中の大塚で母親が行き倒れる。以来、大塚家の下男として酷使されていた。その下男としての名は額蔵。八犬士随一の苦労人。背中に牡丹の痣。12月1日生まれ。*犬山 道節 忠與(いぬやま どうせつ ただとも)
:忠の珠を持つ。浜路の異母兄。江古田・池袋の戦い(史実の江古田・沼袋原の戦い)で扇谷定正に滅ぼされた煉馬氏の旧臣。家伝の書を研究し遁術|火遁の術を使いこなしたが、犬士として自覚するとこれを棄てた。主家と両親を攻め滅ぼした扇谷定正を執拗に付け狙う。短気でトラブルメーカー。左肩に牡丹の痣。*犬飼 現八 信道(いぬかい げんぱち のぶみち)
:信の珠を持つ。大塚村で信乃の隣人であった糠助の子。幼名玄吉。糠助が路頭に迷った時、古河公方家に仕えていた義父に引き取られる。二階松山城介という武術の達人に師事し、捕り物の名人として名を馳せていたが、成氏の怒りを買った信乃が芳流閣に逃げた時には、獄舎番の職を放棄した罪で牢獄につながれていた。小文吾とは乳兄弟。右頬に牡丹の痣。10月20日生まれ。*犬田 小文吾 悌順(いぬた こぶんご やすより)
:悌の珠を持つ。行徳の旅籠屋・古那屋文五兵衛の子。犬江親兵衛は甥にあたる。実の親と暮らした期間が八犬士の中で一番長い。父は町人として暮らしていたため苗字はなかったが、犬太という悪人を殺したために犬田と名乗ることになった。尻に牡丹の痣。*犬阪 毛野 胤智(いぬさか けの たねとも)
:智の珠を持つ。千葉氏の重臣、粟飯原首胤度(あいはら おおと たねのり)の妾の子だが、馬加大記の策謀によって生まれる前に家は断絶。馬加の討手を避け、母は相模箱根の犬坂村で毛野を生んだ。母とともに女田楽の一座に入ったため毛野も女装で育てられ、旦開野(あさけの)と名乗っていた。女田楽師・乞食・放下師に姿を変え、父の仇である馬加大記と籠山逸東太を狙う。八犬士随一の知者である。右肘から二の腕に牡丹の痣。*犬村 大角 礼儀(いぬむら だいかく まさのり)
:礼の珠を持つ。下野の郷士赤岩一角の子。父親を殺してなりかわった化猫に虐待されたため、母方の伯父の犬村家に引き取られた。犬村家の一人娘、雛衣と結婚するが、自分以外の男の子供を妊娠したと誤解して離縁してしまう。左胸に牡丹の痣。*犬江 親兵衛 仁(いぬえ しんべえ まさし)
:仁の珠を持つ。山林房八と沼藺の子で、小文吾は伯父。幼名は真平だったが、大八とも仇名された。生まれつき左手が開かなかったが、これは沼藺が幼少の頃に飲み込んだ珠を握って生まれたためであることがのちに明らかになる。初登場時は4歳。古那屋で房八と小文吾が争った際、房八に脇腹を蹴られて仮死状態に陥る。このとき痣が生じ、蘇生後に左手が開いたことで犬士であることが明らかになった。丶大や妙真(房八の母)に連れられて安房に向かう途中悪漢に襲われたが、このとき神隠しに遭う。これは伏姫神によるものであり、親兵衛はその庇護のもと富山で育てられ、異様な成長を果たして里見義実の前に再登場する。物語後半の主役。儒教の徳目全てを体現した童子で、完璧なまでのヒーローである。それゆえか、高飛車な言動が目立つ。水練が唯一の弱点だったが、関東大戦への参加を前に伏姫の霊夢の中で水練を覚えた。脇腹に牡丹の痣。
発端に関わる人々
:安房里見家初代当主。伏姫の父。結城合戦に敗れて安房に落ち延び、山下定包を討って滝田城主になる。このとき、定包の妻・玉梓を一度助命するが、言を翻して処刑した。のち、隣国の安西景連に城を襲われ落城寸前となった時、飼い犬の八房に「景連の首を取って来たら、褒美に伏姫を嫁にやる」と言った戯言を悔いることになる。『八犬伝』の物語の因果の種を蒔いた人物。*山下柵左衛門定包(やました さくざえもん さだかね)
:主君の神余光弘(じんよ みつひろ)を謀殺して安房滝田城主となり、暴政を行っていた。里見義実に討たれる。*杣木朴平(そまき ぼくへい)
:元金碗八郎の下人。山下定包の専横に憤り、同士の洲崎無垢三(すのさき・むくぞう)と語らって山下定包を暗殺しようとするが、逆用されて神余光弘を殺してしまう。この時、近習の那古七郎と戦闘になり討ち果たすものの無垢三は死亡、自身も重傷を負って捕らわれの身となり晒し首となる。彼の孫が山林房八で、那古七郎の姪と結婚したことから悲劇を生んでしまう。*玉梓(たまずさ)
:神余光弘の愛妾であったが、山下とも密通しており、神余の死後は山下の正妻となった。滝田落城時に彼女を捕らえた里見義実は一度は助命を約束しながら金碗八郎の言に従いこれを翻した。玉梓は「児孫まで、畜生道に導きて、この世からなる煩悩の、犬となさん」との呪詛の言葉を残して処刑された。その怨霊は里見家に仇なすことになる。*金碗八郎孝吉(かなまり はちろう たかよし)
:神余家の一族でその家臣。神余光弘を謀殺した山下定包を討つ機会を窺い、安房に流浪した里見義実を助けてその宿意を果たす。玉梓を神余家滅亡の原因をつくったとして指弾し処刑させた。義実から恩賞が与えられようとすると、二主に仕えることをよしとせず、切腹して果てた。*安西三郎大夫景連(あんざい さぶろうたいふ かげつら)
:安房館山城主。飢饉に陥った里見領を攻め滅ぼそうとした。八房に首を取られる。*伏姫(ふせひめ)
:里見義実の娘。幼児のころ、3歳まで泣きも笑いもせず言葉も発しなかったが、仙翁(役行者)に仁義八行の数珠を与えられたことで健やかに美しく成長した。安西景連との合戦のあと父の戯言の約束を守り、八房と夫婦となって富山の山中で暮らす。身体を許すことはなかったが、八房の気を受けて懐妊したことを仙童に告げられる。伏姫は犬の子を産む恥に耐えられず自死を試み、折りしも富山に導かれた里見義実と金碗大輔の前で切腹を果たした。その傷口から立ち上った白気は、姫の首にかけた数珠を包み、八つの大玉を八方に飛散させる。伏姫は胎児がいなかったことに安堵しながら死んでいく。死後は神となり、犬士たちと里見家に加護を与えた。八犬士の象徴的な母。*八房(やつふさ)
:里見家で飼われていた犬。母犬を亡くしたが、狸に育てられていた。伏姫の形だけの夫。体に八つの牡丹の花のような斑がある。八房が安西景連を討ち取ったエピソードは高辛氏の飼い犬盤瓠の話をもとにしたもの。八房に取り憑いた玉梓の怨念は伏姫により浄化され、以後は伏姫神の乗騎として描かれる。*丶大法師(ちゅだいほうし)
:俗名「金碗大輔孝徳(かなまり だいすけ たかのり)」。里見家家臣で、金碗八郎孝吉の息子。義実は伏姫を娶わせようとしていた。富山で八房もろとも伏姫を鉄砲で撃ち、その自害に立ち会う。八方に散った数珠の玉の行方を探し出すために出家。「犬」の字を分解して「丶大」とした。
八犬伝世界の政治勢力
里見家
:安房里見家2代。義実の息子で、伏姫の弟。幼名二郎太郎。父から家督を譲られ、稲村に城を築いて移った。名君として描かれる。八人の娘と二人の息子がいる。*里見義通|里見太郎義通(さとみ たろう よしみち)
:義成の嫡子。蟇田素藤に拉致されたが、犬江親兵衛に助けられる。安房里見家3代当主となるが早世した。*里見実堯(さとみ さねたか)
:里見義成の次男。幼名次丸。関東大戦には名目上の留守司令を任されていた。義通が早世すると、その子の里見義豊|義豊が幼かったために里見家第4代当主となる。実堯が国主となると八犬士は高齢を理由にそれぞれ息子に家督を譲って退隠した。のちに甥の義豊との間に天文の内訌を起こす。*蜑崎十一郎照文(あまさき じゅういちろう てるぶみ)
:里見家家臣。父親の蜑崎十郎輝武は、富山に入った伏姫と八房を義実の命令で追い水死した。この縁で、丶大ともども八犬士探索の任に携わる。八犬士が見つかった後は、朝廷への使者として安房と京都を往復する。犬士に比べて地味で目立たないが、影で彼らを助ける。
滸河公方足利家
:滸河公方(古河公方)。鎌倉公方足利持氏の子。里見家の主君筋にあたる。信乃の主筋でもあり、現八も仕えていた。しかし、実権を奸臣横堀在村に握らせていたため、二人とも結果的には里見家に追いやってしまう。*横堀史在村(よこぼり ふひと ありむら)
:滸我公方足利成氏に仕える執権。奸臣。現八を獄舎の長の役を固辞した罪で入牢させた。また、村雨についての信乃の弁解を聞かず、討手を差し向けた。
関東管領扇谷上杉家
:関東管領。八犬士最大の敵である。忠臣や賢妻がいるにもかかわらず、奸臣に左右されやすい。
:信乃たちが住んでいた大塚村は家老である大石家の領地であった。また、犬山家の主家である練馬家を滅ぼしたことから犬山道節に執拗に狙われる。庚申塚の処刑場破りや荒芽山での出来事、更には籠山逸東太が発端となって一時的に居城を占拠される事件など八犬士たちを憎み、かれらが仕えた里見家に憎悪の念をたぎらせていった。ついには山内顕定と足利成氏を引き入れて関東大戦を勃発させる。*巨田新六郎助友(おおた しんろくろう すけとも)
:巨田道灌(太田道灌)の息子で扇谷家の家臣。犬山道節が最初に定正を襲撃した時には身代わりを用意することによって難を防ぎ、荒芽山では犬塚・犬川・犬飼・犬田・犬山の5犬士を襲撃、彼らは離散することになり再会までに長い年月をかけることになる。策士という印象が残る人物である。諫言をあえてするため主君と不仲であり、関東大戦では後方に追いやられていた。*蟹目前(かなめのまえ)
:扇谷定正の正妻。賢夫人として称えられている。木から下りられなくなった猿を助けてもらったことで放下屋物四郎こと毛野を知る。奸臣・籠山逸東太を除こうとする河鯉守如の策略に理解を示したが、それによって夫の定正が危機に陥ってしまい、責任を感じて自害してしまう。当初は長尾景春の叔母とされていたが、馬琴の記憶違いからかのちに箙大刀自の娘と設定されている。*河鯉権佐守如(かわごい ごんのすけ もりゆき)
:扇谷家の重臣で、忠臣として知られた人物。籠山逸東太の甘言で、山内家ではなく北条家と和議を結ぶことに異議を唱えていた。蟹目前の飼っている猿の一件で犬阪毛野と知り合い、毛野に北条家への和議の使者として向かう籠山逸東太を闇討ちすることを依頼する。毛野によって籠山逸東太は討ち果たされたものの、家臣を殺されて激怒した扇谷定正が守如の静止を振り切って出兵。毛野と守如の密談を道節が立ち聞きしていたことによって、定正が八犬士たちに急襲され危うく命を落としかけたことに責任を感じて切腹する。河鯉佐太郎孝嗣(政木大全)は息子。
長尾家
:管領家重臣でありながら叛乱(長尾景春の乱)を起こした人物。本人は関東大戦まで登場しないが、その政治動向は八犬士や周辺人物の行動を左右した。*箙大刀自(えびらのおおとじ)
:長尾景春の母親で息子に代わって越後半国を統治している人物。娘は大石家(扇谷家家老で大塚の領主)と千葉家に嫁いでいる。また、蟹目前も近親である(後半では娘と設定される)。義侠の士と称えられる性格から扇谷定正からも一目を置かれている。千葉家家臣馬加一家全滅に絡んだ小文吾と、大石領で処刑場から脱走した荘助が越後にいることを知ると、稲戸由充に命じて二人を捕らえさせた。*稲戸津衛由充(いなのと つもり よしみつ)
:箙大刀自の家老。命令で犬川義任と犬田小文吾の二人を策謀でもって捕らえるが、二人を処刑することに納得いかず助命を試みる。これを拒否されたので、身代わりを仕立てることによって二人を救う。実は犬川義任の父親に恩義を受けていた。関東大戦では、箙大刀自の代理として市川戦に参加する。
石浜千葉家
:武蔵石浜城主千葉自胤の重臣。千葉氏一族。同僚の籠山逸東太や粟飯原胤度を策謀でもって退けて家中の第一人者に成り仰せ、着々と簒奪に準備を整える。犬田小文吾を配下に迎えようとするが固辞されたため監禁した。粟飯原胤度の遺児・犬坂毛野の復讐の相手。*籠山逸東太縁連(こみやま いっとうた よりつら)
:元は千葉家の重臣で馬加大記や栗飯原胤度の同僚であったが、千葉家の実権を握ろうとする馬加大記の策略に乗せられて粟飯原胤度を討ち、自らも逐電する羽目になる。その後、偽赤岩一角の弟子になり、その推挙によって長尾景春の家臣になるが、偽赤岩一角と犬村大角・犬飼現八との騒動によって長尾家にもいられなくなり、竜山免太夫(たつやま めんだゆう)と名前を変えて扇谷家に仕官。長尾家の実情を知っていたことから瞬く間に重臣に成り上がり、多数の家臣達が山内家の和睦を望んでいるにも関わらず、北条家と同盟を結んで山内家と戦うように仕向ける事に成功。北条家との同盟の使者として旅立つが、犬坂毛野の襲撃に遭う。
その他
:関東管領で定正のライバル。しかし、八犬伝では犬士たちとこれといった因縁を持たないので影が薄い観がある。関東大戦では駢馬三連車(へいば・さんれんしゃ)という兵器(チャリオット|戦車の一種)を持ち出してくる。*伊勢長氏(北条早雲)
:本編には登場しないが、八犬伝の世界では北条家が史実より早く小田原を居城とし、両管領家を脅かすほどに成長している。関東大戦も両家が合体して里見を滅ぶすことによって北条家に圧力をかけるために起こしたという側面もある。*武田信昌|武田民部大輔信昌(たけだ みんぶのたいふ のぶまさ)
:甲斐武田家の当主。道理をわきまえた名君。信乃と道節を家臣に誘った。両管領による関東大戦にも与しなかった。
犬士の周辺人物
大塚の人々
:犬塚信乃の父。鎌倉公方家の近習大塚匠作三戍(おおつか しょうさく みつもり)の子。結城合戦が敗北に終わった際、父から託された鎌倉公方家伝来の名刀村雨丸を携え、美濃大垣で春王と安王の首級を奪取。信濃路で妻手束(たつか)とめぐり合い、長い旅を経て郷里・武蔵大塚村に帰るが、家督と村長の職は姉亀篠の夫蟇六に奪われており、犬塚と姓を改めた。姉夫婦から村雨と信乃を守るべく自害した。*井丹三直秀(いの たんぞう なおひで)
:信乃の外祖父。手束の父。信濃の武士で、源頼政に仕えた猪隼太の末裔。結城合戦に参加して戦死した。本編には直接登場しないが、信乃は各地でその関係者たちとめぐり合い奇縁を感じることになる。なお、馬琴は滝沢家の祖先を猪隼太と考えていたことがあった。*大塚(弥々山)蟇六(おおつか(やややま) ひきろく)
:大塚村の郷士。元々はごろつきであったが大塚番作の異母姉亀篠(かめざさ)の夫となり、大塚家の家督を奪って大塚村の村長になった。番作は姉夫婦と争わず「犬塚」を称した。番作が自害すると村人の手前信乃を引き取り、養女浜路を娶わせて家督を譲ると約束するが、かたわら村雨を奪おうと亀篠と共に様々な策を練る。*浜路(はまじ)
:大塚蟇六の養女で犬塚信乃の許嫁。実は犬山道節の異母妹で名を正月(むつき)と言った。母親は道節の父の愛妾で、道節とその母親を除いて正妻になろうとしたが、道節が蘇生したため発覚して処断。絶縁される形で大塚家に養女に出された。許嫁の信乃を慕い、信乃の滸我への旅立ちの前夜には切々と想いを訴えた(「浜路くどき」と呼ばれる名場面である)。養父母の姦計にはめられて陣代・簸上宮六に嫁がされそうになり、首を吊ろうとする所を、かねて浜路に横恋慕する網乾左母二郎に誘拐された。しかし浜路は左母二郎に従わず、左母二郎が持っていた本物の村雨を奪回して左母二郎に突きかかったため、本郷円塚山で殺される。*糠助 (ぬかすけ)
:大塚村で信乃の近所に住んでいる善良な百姓。死の間際、かつて安房で漁師をしていたが禁漁区で漁をしたため安房を追われたこと、信乃と同様の痣を持ち玉を得た玄吉という息子(現八)がいて滸我(古河)公方の家臣に託したことを信乃に語る。*網乾左母二郎(あぼし さもじろう)
:浪人。弁説爽やかで歌舞音曲に通じていた。亀篠から浜路との結婚を引き換えに信乃の村雨を盗むよう依頼され、首尾よく事を果たすが、蟇六に偽物を渡し自分の物とした。
:幸田露伴は「山東京伝|京伝や式亭三馬|三馬にかかれば粋で野暮でなくて物のわかった好人物として書かれるのに、馬琴の手にかかれば人の機嫌を取ることはうまいが腹の中は不親切な人物として書かれる」と評している。二次創作では露出度が多くなる傾向にある。
行徳の人々
:犬田小文吾の父。旅籠屋「古那屋」を営む。もとは安房の人で、神余光弘の近習・那古七郎の弟。*沼藺(ぬい)
:小文吾の妹で親兵衛の母。山林房八に嫁いだが、夫と兄との間が険悪になったため離縁された。夫と兄の喧嘩に巻き込まれて死ぬ。その血は破傷風で瀕死となった犬塚信乃を救い(作中では男女の血を傷口にそそぐことが治療の秘法として示されている)、子は犬士としての生を享けた。*山林房八(やまばやし ふさはち)
:小文吾の義弟。市川の顔役。相撲の勝負で負けたことを根に持ち、お尋ね者である信乃を出せと古那屋に押しかけて小文吾と争い、誤って妻の沼藺と子の大八を手にかけた上、小文吾に斬られる。実は、彼の祖父が古那屋文五兵衛の兄を殺したという悪因縁があり、これを解くための行動だったことが臨終の際に知られる。房八は己の身を殺すことによって犬塚信乃を助け、子の大八は犬士・親兵衛として蘇生した。
犬山家の関係者
:犬山家の元家臣。十条力二郎・尺八の父。名ははじめ世四郎。音音と密通していたことが彼女の妊娠によって発覚し、犬山家から暇を出された。煉馬家滅亡後は船頭をしながら管領家への復仇の機会を窺い、信乃らによる荘助救出に協力することになる。荒芽山から伏姫により富山に導かれて親兵衛を育て、後半では親兵衛に従って活躍する。*十条力二郎・尺八郎(じゅうじょう りきじろう・しゃくはちろう)
:犬山道節の乳兄弟。双生児。刑場破りを行った四犬士の逃亡を父とともに助け、討死した。その思いは両親やそれぞれの妻である曳手(ひくて)・単節(ひとよ)姉妹の前に現れる。*音音(おとね)
:犬山道節の乳母。若い頃に姨雪代四郎と過ちがあり、十条力二郎・尺八兄弟を生む。練馬家の滅亡後は息子の嫁たちとともに上州荒芽山の庵に住み、ここが信乃・荘介・小文吾・現八・道節の五犬士結集の場となった。息子たちの願いを受け、代四郎と正式の婚儀を行う。庵が巨田助友の襲撃を受けると薙刀を手に奮戦。伏姫神によって一家ともども富山に導かれ、親兵衛を育てる。再登場後は管領戦で大活躍を見せる。
赤岩庚申山の人々
:正体は庚申山の化猫。本物の一角を食い殺し、彼に化けて村に戻った。現八に右目を射抜かれ、その治療のために、雛衣に彼女の胎児と心臓を差し出すよう迫る。*雛衣(ひなぎぬ)
:犬村大角の妻。大角の珠を飲み込んだために妊娠状態となり、姦通の疑いをかけられ離縁される。偽一角の要求を飲み、また自らの疑いを晴らすために自害してしまう。
甲斐の人々
:浜路姫の養父。甲斐国猿石村村長。井丹三直秀に仕えていたため、その孫である信乃を気に入る。*泡雪奈四郎秋実(あわゆき なしろう あきざね)
:武田家家臣。四六城木工作の後妻夏引(なびき)と密通している。木工作を殺害し、その罪を信乃に着せようとした。*浜路姫(はまじひめ)
:里見義成の五女。浜路に酷似。幼い頃に鷲にさらわれて甲斐の地に運ばれ、四六城木工作に拾われてそこで育つ。四六城家に信乃が逗留した際、信乃の許嫁の浜路の魂が乗り移って想いを伝えた。安房に戻ったのち、蟇田素藤の叛乱に巻き込まれるが、伏姫神によって守られる。大団円で信乃の室となる。
その他
:行く先々で八犬士達を阻む悪女。はじめは武蔵において盗賊の妻として犬田小文吾の前に現れ、小文吾を殺そうとして返り討ちに遭った夫のために小文吾を罠に落とそうとし、馬加大記に突き出した。ついで偽赤岩一角の後妻として上州に現れ、義理の子である犬村大角を苦しめた。その後、越後に逃れて山賊の妻となっていたところ犬田小文吾と遭遇し、その命を狙うが小文吾と荘助によって阻まれる。最後は武蔵で辻君となり強盗殺人を犯していたところを、管領との戦い前夜の六犬士(毛野・親兵衛を除く)に捕捉され、その悪行の報いを受けさせられる。*石亀屋次団太(いしかめや じだんた)
:越後小千谷の旅籠の主。土地の顔役で、小文吾を歓待した。のちに子分の一人と妻の裏切りに遭い越後を追われ、諸国を流浪するが、犬江親兵衛と知り合って里見家に従う。* 氷垣残三夏行(ひがき ざんぞう なつゆき)
:武蔵穂北(地理的には保木間に比定されている)の郷士。もとは結城合戦の参加者。娘重戸(おもと)の婿で豊島遺臣である落鮎余之七有種(おちあゆ よのしち ありたね)とともに、管領家の勢力圏内で自治空間を築いている。はじめ現八と大角を盗賊と間違えて捕らえたが、伏姫の加護と聡明な重戸の判断により現八と大角は脱出、信乃・道節と邂逅して真犯人を捕らえ汚名を晴らした。この縁によって穂北郷は犬士の拠点となり、郷民は管領との戦いの際の戦力となった。
物語後半の登場人物
:上総館山城主(安房館山城ではない)。もともとは伊吹山の山賊の息子で、父親が刑死したため上総へ逃走。幸運と策謀によって館山城主に成り上がる。妙椿の幻術によって見せられた浜路姫の姿に一目惚れし、里見家との縁組を願うが拒絶され、里見家の御曹司・義通を誘拐して兵を起こすが、親兵衛らによって鎮圧される。一旦は解放されたものの、妙椿の助力を得、里見家から親兵衛を遠ざけて館山城を再奪取した。しかし、ふたたび親兵衛によって討たれた。*妙椿(みょうちん)
:蟇田素藤と夫婦になり、数々の妖術を操って彼を助け、里見家を苦しめる八百比丘尼。正体は昔、八房の犬を育てた安房の富山の牝狸。玉梓の霊が取り憑いており、恨みをその身に残す。*政木大全孝嗣(まさき だいぜん たかつぐ)
:はじめ河鯉佐太郎孝嗣(かわごい すけたろう たかつぐ)。河鯉守如の息子。犬士たちからは「我們と同因果の天縁約束あるものならば、犬士の隊に入るべき」準犬士と位置づけられている。父親の後を継いで扇谷家に忠義を尽くそうとするが、奸臣たちの讒言により殺されそうになった。危ういところを政木狐に助けられ、犬江親兵衛に誘われて政木大全と名を変え、里見家のために働くことになる。「大団円」で上総大田木城(大多喜城)主となり、その系譜は多くの当主が正木大膳を名乗って里見家に仕えた史実の安房正木氏に結び付けられている。*政木狐(まさきぎつね)
:河鯉孝嗣を幼少の頃に育てた乳母。実は守如に恩を受けた狐。河鯉孝嗣の処刑の場に箙大刀自に化けてあらわれてこれを救った。これにより功徳を積んだ狐がなるという「狐竜」となって、親兵衛と孝嗣が見守る前で昇天した。孝嗣(政木大全)は彼女にちなんで名を改めた。後年、天命を全うし、石となって墜落する。*徳用(とくよう)
:結城の名刹・逸匹寺の住職。管領細河家の執事・香西復六の子で、細河政元とは乳兄弟にあたる。少年時に人を殺し、出家するという条件で釈放された過去があり、素行が悪い。里見家主催の結城の法要で呼ばれなかったことに腹を立て八犬士たちを襲撃した。その後は京都に舞い戻り、細河政元に里見家を讒訴、京に上った犬江親兵衛と対決する。*細河左京兆政元(細川政元)(ほそかわ さけいのちょう まさもと)
:室町幕府の管領。男色で、犬江親兵衛に惚れる。虎退治を終えた親兵衛と、その帰国を阻もうとする政元のやり取りは、三国志の関羽と曹操のやりとりに由来する。
登場する物品・用語
:仙翁(行者の翁)から伏姫に譲られた水晶の数珠。108つの玉の内の8つの大玉で、「仁義礼智信忠孝悌」と現れていたが、八房が伏姫を恋い慕うようになってからは「如是畜生発菩提心」の8文字がひとつずつ浮かんでいた。伏姫の自害に伴って数珠が飛散する際にそれぞれの玉の文字が「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」と変わったものである。残りの100個の小玉は繋ぎなおされて、丶大法師が数珠として常に携帯している。八犬士同士の距離が近づくと感応しあってその存在を教え、肉体的な傷や病気の治癒を早める力を持っている。* 村雨(村雨丸)
:鎌倉公方足利家に伝わる宝刀で、殺気をもって抜き放てば刀身から水気が立ち上る。八犬伝世界ではその特徴とともに広く知れ渡った刀である。結城落城の際、公方家の近習であった大塚匠作から一子・番作に託され、番作はその死に際して子の犬塚信乃にこの刀を滸我公方成氏に献上することを託した。* 富山(とやま)
:安房随一の高峰で、八犬伝世界の聖地。発端、伏姫はこの山で自害し、大団円で犬士たちはこの山に消えた。
:実在する富山 (千葉県)|富山(南房総市)は「とみさん」と読む。標高349mの山で「伏姫籠窟」「犬塚」などがあり観光地となっている。最寄の岩井駅前には伏姫と八房の銅像が建っている。* 館山城(安房)
:『八犬伝』では発端で安西景連の居城として、「大団円」では犬江親兵衛に与えられる城として登場する。諸書でもしばしば混同されるが、蟇田素藤が居城とした「館山城」は上総国夷隅郡にあるとされ、上総広常の館のあとと設定されている。
:実際の館山藩|館山城(館山市)には、史実の里見氏が戦国時代末に本拠を移した。現在、模擬天守は館山市立博物館分館となっており、『八犬伝』関係の展示が行われている。* 名詮自性
:名前がそのものの本性をあらわすという意の、本来は仏教用語。主要人物の名には、物語世界においてあらかじめ定められた宿命に関わるものがあり、その名の意味が解き明かされることで因果が成就したことを証明する。たとえば、伏姫の「伏」は「人にして犬に従う」意をあらわし、親兵衛の両親である房八・沼藺(ぬい)夫婦の名は「八房・いぬ」を転倒させたものである。
出典と解釈
八犬士の「モデル」
「里見八犬士」は、もともと『合類大節用集』(槇島昭武編、1717年刊行)に「尼子十勇士」などとともに掲載された武士の名前のリストである(犬山道節・犬塚信濃・犬田豊後・犬坂上野・犬飼源八・犬川荘助・犬江新兵衛・犬村大学)。かれらの活動時期や事跡はもとより、実在したかどうかも明らかではない。馬琴は、実在したかもしれない8人の武士の物語ではなく、彼らの名を借りた伝奇小説(稗史)をつくると言明している。なお、史実の里見家最後の当主であった館山藩|館山藩主里見忠義は、江戸幕府によって伯耆国に事実上配流され(倉吉藩)、その地で没した。このとき忠義に殉死した8人の家臣があり、戒名に共通して「賢」の字が入ることから八賢士と称される。彼らの墓は鳥取県倉吉市の大岳院にあり、また倉吉から分骨した墓が館山城の麓に建てられている。この八賢士を八犬士のモデルに求める説もある。
漢籍と中国白話小説
『八犬伝』中には多くの漢籍が引用されており、「稗史」の世界に奥行きを持たせている。白話小説では『水滸伝』のほか、『三国志演義』が多く参照されている。とくに関東大戦の描写では顕著であり、洲崎沖海戦は赤壁の戦いを焼き直したものである。また、『封神演義』からの影響を指摘する説もある。
軍記物・地誌
馬琴は「回外剰筆」で、南総里見家を記した「史書」(軍記物)や地誌として『里見軍記』『里見九代記』、『房総志料』などを挙げている。なお、近年の研究により史実の初期里見氏はこれら軍記物に語られてきた姿と大きく異なることが指摘されている。越後小千谷の描写には鈴木牧之『北越雪譜』の原稿が参照されており、同地で行われる牛の角突きが作中に取り込まれている。
馬琴の「隠微」
馬琴は、みずからの創作技法として「稗史七則」をまとめ、『八犬伝』に付言として記している。このうち「隠微」は、物語には文外に「深意」があるとするものである。「百年の後知音を俟て是を悟らしめんとす」という馬琴の言葉には、多くの読者や研究者が魅了されてきた。『八犬伝』の物語構造や人物配置には仏教説話・日本神話、あるいは民間信仰などのモチーフが複合的に投影されていると解釈する研究者もいる。「隠された出典」と解釈されたものに以下のようなものがあげられる。* 八字文殊曼荼羅
: 高田衛が提唱。獅子(=八房)に騎乗する文殊菩薩(=伏姫)のイメージが投影されているとする。この説によれば「八犬士のうち二人が女装して登場する理由」は、文殊菩薩に従う八大童子のうち二人が比丘(女児)であることに求められ、「犬士の痣が牡丹である理由」は牡丹の匂いが獅子(=八房)の力を抑える霊力があることで説明される。また、後半に現れる政木大全が「準犬士」として遇されるのは文殊菩薩の従者である善財童子が投影されているためとされている。
: 『八犬伝』刊行開始前に出された刊行予告から、一時馬琴には『合類大節用集』の記述を無視してまで物語を「七犬伝」とする構想があったという。高田衛は八犬士に北斗七星のイメージが投影されているとも指摘している。七星の一つミザルにある「アルコル|輔星(添え星)」を8番目の星と見なすことにより齟齬をなくしているが、これによって「八犬士のうち一人が子供として登場する理由」も説明できるとする。
また、『八犬伝』に執筆当時の社会情勢への馬琴の批評を見出す解釈も存在する。親兵衛の造形には打ちこわしの際に現れたという大童子の姿が重ねられているとする見方もあり、また親兵衛の京都物語に登場する足利義政批判に大御所徳川家斉批判が、虎退治の物語には大塩平八郎の乱(1837年)の隠喩があるともされる。小谷野敦は里見の領国を日本のミニチュアととらえ、領民を組織して行われた里見家の軍事訓練の描写などに江戸時代後期の海防論との関係を見出している。
南総里見八犬伝を題材にした作品
日本で生まれたファンタジーの古典として『八犬伝』は多くの作品に参照されてきた。登場人物の名やモチーフの借用はしばしば行われており、『八犬伝』の名を冠していても原作から自由に新たな世界を創作していることがある。また、現代と価値観の異なる時代に書かれた古典で、しかも長大であることもあり、原作を志向した作品であってもさまざまなレベルの再解釈が行われ、現代の作品として蘇生されている。以下の外部サイトでも関連作品の列挙と解説が行われているので、参照されたい。*http://homepage2.nifty.com/fusehime/raretsu.htm
関連書籍(事務的羅列)
白龍亭・パロディ等
演劇
映画
小説
: 『八犬伝』物語をたどる「虚の世界」と、執筆者馬琴を描く「実の世界」が同時進行する小説。
: 八犬士の転生した八猫士というキャラクターが敵役に登場する。
漫画
テレビ
アニメ
ゲーム
参考文献
原作
: 原典。
: 現代語完訳。
: 現代語抄訳。単行書は1976年出版。
研究書
: 高田衛『八犬伝の世界』(中公新書、1980年)の改訂増補。
外部リンク
ふみくら − http://www.fumikura.net/text/hakkenden.html
『南總里見八犬傳』本文テキストデータ
里見八犬伝デジタル美術館(館山市観光協会)
南房総データベース
伏姫屋敷−南総里見八犬伝のホームページ
白龍亭
犬の曠野
関連項目
http://www.kanko-otakara.jp/kikaku/index.cgi?rm=detail&plan_code=22 |